2012年02月04日
1月26日付で、東京大学物性研究所の押川正毅先生より流山市長、市議会議員、教育委員会、放射能対策室に提出された「流山市建白書」。
http://masakioshikawa.blogspot.com/2012/01/24126-3-icrp1msvicrp-3.html
専門家の立場から流山市をはじめとする東葛地域の汚染状況と必要な対策の考え方を示したものであり、「流山・東深井地区の子供達を放射線から守る会」としても、また個人としても押川先生の勇気ある行動と、その建白書の内容に賛同いたします。
ぜひ市民の皆様にも一読いただきたいと考えています。
当建白書から主要部分を抜粋し、(少しだけかみ砕いて)要約してみたいと思います。
流山建白書からの引用部分をオレンジ色の字で記します。
黒字は、当ブログの筆者である私の要約文です。
1.優先すべき対策について
(原文から抜粋)
2.放射能汚染の危険性
(原文から抜粋)
・がんの発生確率は被曝量に比例し、しきい値(これ以下であれば影響がないという値)は存在しないのが科学的にも標準的な学説であり、国際放射線防護委員会(ICRP)勧告や日本国の法令でもこれに基づいた放射線防護を行うことになっています。
・一般公衆の被曝限度(年間1mSv)も安全を保証する数値ではなく、対応するリスクが社会的に受容可能であるとの判断にすぎません。
・流山市を含む東葛地域の多くの地点では、年間被曝線量が単純計算で一般公衆の被曝限度を超過する異常事態であり、相応の対策を取る必要があります。
<要旨1>
・『年間1mSv未満であれば安全』というわけではなく、被曝量は可能な限り低減する必要がある。
・流山市の多くの地点では(外部被曝だけで)年間1mSvを超えるため、低減対策が必要である。
3.国の方針を待って従うべきか?
(原文から抜粋)
・「放射線量が0.23μSv/時以上の区域を、除染実施計画を定める区域とする」方針が提示されています。現在の基準も決して十分なものではありません。
・国の基準は最低限のものと考え、より住民側に立った対策を行い、また対策の不備を国に訴えていくべきだと考えます。
・実際、上でも触れたように、国も対策の不備を認めて次第に修正する傾向にありますので、早期から国の基準以上に市民の安全を確保する対応を行うことは、最終的にはコスト面でも効率的であると考えます。
<要旨2>
・国は、放射線量が年間1mSvを超える区域、つまり時間当たりになおして0.23μSv/時以上の区域を除染実施地域とする方針を示し、流山市を「放射能汚染重点調査地域」に指定した。
・上記2.で示したように『0.23μSv/時未満であれば安全』、という意味ではない。
・住民の健康を考えた場合には、より安全側に立った対策を行うべきである。
4.表土の除去について
(原文から抜粋)
・放射性物質を体内に取り込むことによる内部被曝には、外部被曝にも増して未解明な点も多く、健康への影響がより懸念されます。被曝への感受性の高い子どもに関しては、特に配慮が必要です。
・表面汚染密度が4Bq/cm^2 (=40,000Bq/m^2)を超えるおそれのある場所は放射線管理区域に指定する必要があります。
・事故10ヶ月後の現在、空間線量は主に地面の放射性セシウムによる汚染によってもたらされており、Cs-134とCs-137のベクレル比を0.8:1、自然放射線量を0.04μSv/時とすると、高さ1mの空間線量が約0.18μSv/時以上の場所は表面汚染密度により放射線管理区域に相当します。
・被曝を管理された成人である放射線業務従事者を保護するための規定に当てはまる場所で、子どもたちが遊んで良い道理はなく、校庭の基準を定めるとすればこれよりも一段と低くあるべきです。
・9月29日発表の文部科学省航空機モニタリング結果によれば、流山市は全域でCs-134,Cs-137合算で30,000Bq/m^2以上汚染されています。
・従って、全ての学校(保育園・幼稚園等を含む)の校庭(土壌面)で表土を除去することは最低限必要であると考えます。
<要旨3>
・放射能への感受性の高い子供たちに関しては、内部被曝への配慮が必要である。
・流山市は、全域で放射線管理区域に指定すべき汚染レベルにある。
・全ての学校(保育園・幼稚園を含む)の校庭の表土除去を行うことが最低限必要である。
(原文から抜粋)
・柏市の実験(田中北小学校)では、校庭での放射線量が0.383μSv/時であったものが、表土の除去により0.054μSv/時(いずれも高さ5cm)と、ほぼ事故以前のレベルに低下しています。
・例えば0.2μSv/時といった基準を設け、それ以下の学校は除染しないことにしてしまうと、東葛地域では除染しない学校の方が放射線量が高いという逆転現象が起こってしまう可能性が高いことになります。これは公平性の観点からも問題であり、全ての学校での表土除去の必要性を示すものです。
・土壌面では放射性物質は砂塵に付着しており、風などで舞い上がることにより内部被曝が懸念されます。また、風や雨水で移動することで濃縮スポットの形成の要因にもなります。土壌面の表土の除去をなるべく早急に行うことは、結局はコスト面でも効率的だと考えます。
<要旨4>
・校庭の表土除去により、ほぼ原発事故による汚染が起こる前のレベルに放射線量を低減することが実証されている。
・例えば0.2μSv/時という基準によって表土除去を行わなかった学校では、表土除去をした学校よりも放射線が高い状況が続くことになるため、不公平が生じる。全ての学校での表土除去が必要である。
・放射性物質は校庭の土に付着しており、風などで舞い上がり、これを吸い込むことによる内部被曝が懸念される。
・放射性物質の濃度が濃い場所(マイクロスポット)は、時間が経つと風や雨水で移動するため、マイクロスポットだけを対象とした除染ではイタチゴッコになる。土壌面の表土を早期に除去することは、コスト面でも有利である。
5.公園や運動場等の除染について
(原文から抜粋)
・学校と同様に除染(特に表土の除去)をすることが望ましいですが、利用者による選択が可能な施設では、全ての施設を一様に除染する必要は必ずしもありません。
・安心して利用できる「クールスポット」を(地理的な不公平がなるべく生じないように)順次形成するべきと考えます。
<要旨5>
・公園施設でも、表土除去による除染が望ましい。
・ただし、学校のように継続的に利用するのとは異なり、利用者が放射線量が高い場所を避けるなど、利用方法を選択できるため、全ての公園施設を一様に除染する必要はない。
・地域で不公平が生じないように配慮しながら、表土除去による除染を行う公園を選択して「クールスポット」を形成すべきである。
6.市民との対話について
(原文から抜粋)
・放射能汚染対策は、除染に限らず、ソフト面の対策も非常に重要です。
・たとえば給食に含まれる放射性物質について懸念している市民は少なくありません。
・市のリソースが限られていることは誰もが認識しているはずですが、そうであるからこそ、計画段階から市民との対話・議論によって最も効率的な対策をつくりあげるべきだと考えます。
・危機に際して市の環境向上に貢献したいと思う市民は少なくないはずです。
<要旨6>
・市民の考えやノウハウを、除染対策の計画段階から活かすような協働の仕組みが必要である。
公園の除染について(私案)
最後に、押川先生の建白書を参考に、公園施設の除染についての私の考えを記しておきます。
流山市は森林のようになっている公園が多く、古墳の森のように広大な面積の公園もあります。
公園施設の全面表土除去による除染は容易ではないため、段階的に除染をしていくのが現実的であると考えます。
そこで、流山市を幾つかの地区に分割し、
①芝生や砂場、遊具があり、地面が土になっている公園
②(森林のような公園の場合)一つの公園内でも子供たちの遊び場になっていたり、土ホコリが舞い上がる可能性があるエリア
を住民の意見を聞きながら選択。
それらの公園施設から優先的に重機による全面表土除去を行い、少しずつクールスポットを増やしていくのが良いと思います。
一方、古墳の森などでは0.6μSv/時という、特に放射線量が高い場所(マイクロスポット)が見つかっていますが、このような場所は立ち入り禁止にすることも必要に考えます。
「流山・東深井地区の子供達を放射線から守る会」による東深井地区公園(古墳の森)の計測結果
http://blog.goo.ne.jp/nagareyama_higashifukaikodomo/e/6329c1e947f435e4852378fd50fa9bd1
http://blog.goo.ne.jp/nagareyama_higashifukaikodomo/e/f81eb58a297fdb656c2bc6ec1285399d
http://maps.google.co.jp/maps/ms?
msid=203944658864682907051.0004b3bcc29411e4742a8&msa=0&ll
中長期的には、流山市を幾つかの地区に分割し、地区毎に市民ボランティア隊を組成して、公園施設や通学路などの計測&除染&計測・・・を継続的に行う仕組みを作る、というのも一案と思います。
http://masakioshikawa.blogspot.com/2012/01/24126-3-icrp1msvicrp-3.html
専門家の立場から流山市をはじめとする東葛地域の汚染状況と必要な対策の考え方を示したものであり、「流山・東深井地区の子供達を放射線から守る会」としても、また個人としても押川先生の勇気ある行動と、その建白書の内容に賛同いたします。
ぜひ市民の皆様にも一読いただきたいと考えています。
当建白書から主要部分を抜粋し、(少しだけかみ砕いて)要約してみたいと思います。
流山建白書からの引用部分をオレンジ色の字で記します。
黒字は、当ブログの筆者である私の要約文です。
1.優先すべき対策について
(原文から抜粋)
・市内の全学校の校庭(土壌面)の表土の除去
・市内の公園や運動場等で、特に土壌面の表土の除去(一部の施設からでも)
・給食等の、除染以外のソフト面も含めて、市民との対話によって対策を検討すること
2.放射能汚染の危険性
(原文から抜粋)
・がんの発生確率は被曝量に比例し、しきい値(これ以下であれば影響がないという値)は存在しないのが科学的にも標準的な学説であり、国際放射線防護委員会(ICRP)勧告や日本国の法令でもこれに基づいた放射線防護を行うことになっています。
・一般公衆の被曝限度(年間1mSv)も安全を保証する数値ではなく、対応するリスクが社会的に受容可能であるとの判断にすぎません。
・流山市を含む東葛地域の多くの地点では、年間被曝線量が単純計算で一般公衆の被曝限度を超過する異常事態であり、相応の対策を取る必要があります。
<要旨1>
・『年間1mSv未満であれば安全』というわけではなく、被曝量は可能な限り低減する必要がある。
・流山市の多くの地点では(外部被曝だけで)年間1mSvを超えるため、低減対策が必要である。
3.国の方針を待って従うべきか?
(原文から抜粋)
・「放射線量が0.23μSv/時以上の区域を、除染実施計画を定める区域とする」方針が提示されています。現在の基準も決して十分なものではありません。
・国の基準は最低限のものと考え、より住民側に立った対策を行い、また対策の不備を国に訴えていくべきだと考えます。
・実際、上でも触れたように、国も対策の不備を認めて次第に修正する傾向にありますので、早期から国の基準以上に市民の安全を確保する対応を行うことは、最終的にはコスト面でも効率的であると考えます。
<要旨2>
・国は、放射線量が年間1mSvを超える区域、つまり時間当たりになおして0.23μSv/時以上の区域を除染実施地域とする方針を示し、流山市を「放射能汚染重点調査地域」に指定した。
・上記2.で示したように『0.23μSv/時未満であれば安全』、という意味ではない。
・住民の健康を考えた場合には、より安全側に立った対策を行うべきである。
4.表土の除去について
(原文から抜粋)
・放射性物質を体内に取り込むことによる内部被曝には、外部被曝にも増して未解明な点も多く、健康への影響がより懸念されます。被曝への感受性の高い子どもに関しては、特に配慮が必要です。
・表面汚染密度が4Bq/cm^2 (=40,000Bq/m^2)を超えるおそれのある場所は放射線管理区域に指定する必要があります。
・事故10ヶ月後の現在、空間線量は主に地面の放射性セシウムによる汚染によってもたらされており、Cs-134とCs-137のベクレル比を0.8:1、自然放射線量を0.04μSv/時とすると、高さ1mの空間線量が約0.18μSv/時以上の場所は表面汚染密度により放射線管理区域に相当します。
・被曝を管理された成人である放射線業務従事者を保護するための規定に当てはまる場所で、子どもたちが遊んで良い道理はなく、校庭の基準を定めるとすればこれよりも一段と低くあるべきです。
・9月29日発表の文部科学省航空機モニタリング結果によれば、流山市は全域でCs-134,Cs-137合算で30,000Bq/m^2以上汚染されています。
・従って、全ての学校(保育園・幼稚園等を含む)の校庭(土壌面)で表土を除去することは最低限必要であると考えます。
<要旨3>
・放射能への感受性の高い子供たちに関しては、内部被曝への配慮が必要である。
・流山市は、全域で放射線管理区域に指定すべき汚染レベルにある。
・全ての学校(保育園・幼稚園を含む)の校庭の表土除去を行うことが最低限必要である。
(原文から抜粋)
・柏市の実験(田中北小学校)では、校庭での放射線量が0.383μSv/時であったものが、表土の除去により0.054μSv/時(いずれも高さ5cm)と、ほぼ事故以前のレベルに低下しています。
・例えば0.2μSv/時といった基準を設け、それ以下の学校は除染しないことにしてしまうと、東葛地域では除染しない学校の方が放射線量が高いという逆転現象が起こってしまう可能性が高いことになります。これは公平性の観点からも問題であり、全ての学校での表土除去の必要性を示すものです。
・土壌面では放射性物質は砂塵に付着しており、風などで舞い上がることにより内部被曝が懸念されます。また、風や雨水で移動することで濃縮スポットの形成の要因にもなります。土壌面の表土の除去をなるべく早急に行うことは、結局はコスト面でも効率的だと考えます。
<要旨4>
・校庭の表土除去により、ほぼ原発事故による汚染が起こる前のレベルに放射線量を低減することが実証されている。
・例えば0.2μSv/時という基準によって表土除去を行わなかった学校では、表土除去をした学校よりも放射線が高い状況が続くことになるため、不公平が生じる。全ての学校での表土除去が必要である。
・放射性物質は校庭の土に付着しており、風などで舞い上がり、これを吸い込むことによる内部被曝が懸念される。
・放射性物質の濃度が濃い場所(マイクロスポット)は、時間が経つと風や雨水で移動するため、マイクロスポットだけを対象とした除染ではイタチゴッコになる。土壌面の表土を早期に除去することは、コスト面でも有利である。
5.公園や運動場等の除染について
(原文から抜粋)
・学校と同様に除染(特に表土の除去)をすることが望ましいですが、利用者による選択が可能な施設では、全ての施設を一様に除染する必要は必ずしもありません。
・安心して利用できる「クールスポット」を(地理的な不公平がなるべく生じないように)順次形成するべきと考えます。
<要旨5>
・公園施設でも、表土除去による除染が望ましい。
・ただし、学校のように継続的に利用するのとは異なり、利用者が放射線量が高い場所を避けるなど、利用方法を選択できるため、全ての公園施設を一様に除染する必要はない。
・地域で不公平が生じないように配慮しながら、表土除去による除染を行う公園を選択して「クールスポット」を形成すべきである。
6.市民との対話について
(原文から抜粋)
・放射能汚染対策は、除染に限らず、ソフト面の対策も非常に重要です。
・たとえば給食に含まれる放射性物質について懸念している市民は少なくありません。
・市のリソースが限られていることは誰もが認識しているはずですが、そうであるからこそ、計画段階から市民との対話・議論によって最も効率的な対策をつくりあげるべきだと考えます。
・危機に際して市の環境向上に貢献したいと思う市民は少なくないはずです。
<要旨6>
・市民の考えやノウハウを、除染対策の計画段階から活かすような協働の仕組みが必要である。
公園の除染について(私案)
最後に、押川先生の建白書を参考に、公園施設の除染についての私の考えを記しておきます。
流山市は森林のようになっている公園が多く、古墳の森のように広大な面積の公園もあります。
公園施設の全面表土除去による除染は容易ではないため、段階的に除染をしていくのが現実的であると考えます。
そこで、流山市を幾つかの地区に分割し、
①芝生や砂場、遊具があり、地面が土になっている公園
②(森林のような公園の場合)一つの公園内でも子供たちの遊び場になっていたり、土ホコリが舞い上がる可能性があるエリア
を住民の意見を聞きながら選択。
それらの公園施設から優先的に重機による全面表土除去を行い、少しずつクールスポットを増やしていくのが良いと思います。
一方、古墳の森などでは0.6μSv/時という、特に放射線量が高い場所(マイクロスポット)が見つかっていますが、このような場所は立ち入り禁止にすることも必要に考えます。
「流山・東深井地区の子供達を放射線から守る会」による東深井地区公園(古墳の森)の計測結果
http://blog.goo.ne.jp/nagareyama_higashifukaikodomo/e/6329c1e947f435e4852378fd50fa9bd1
http://blog.goo.ne.jp/nagareyama_higashifukaikodomo/e/f81eb58a297fdb656c2bc6ec1285399d
http://maps.google.co.jp/maps/ms?
msid=203944658864682907051.0004b3bcc29411e4742a8&msa=0&ll
中長期的には、流山市を幾つかの地区に分割し、地区毎に市民ボランティア隊を組成して、公園施設や通学路などの計測&除染&計測・・・を継続的に行う仕組みを作る、というのも一案と思います。